夜尿症

夜尿症(おねしょ)を克服!

おねしょの問題も実は脳・神経システムが大きく関わっている可能性があります。尿意は我々の意識とは関係なく自動的に発生してしまいます。ただ尿意を感じたときに、いつでもどこでもおしっこをできるわけではないので脳がおしっこを我慢する、尿意を一時的に抑制することができるようになっています。つまり、脳(特に前頭葉)がここではおしっこができないと考え、我慢しなさいという命令を送って排尿をコントロールできるということです。

上記のように、排尿のコントロールには基本的に脳が正常に機能している必要があります。これは夜寝ているときも同じです。寝ているときの脳は活動している部分としていない部分がありますが、ここでは基本的に脳もお休みをしていると考えましょう。脳がお休みをしているときでも、ある程度の年齢に達し脳が十分に発達していれば尿意を抑制することができます。しかしながら、小さい子供のように脳(特に前頭葉)が十分に発達していない(活性化していない)場合、寝ているときに尿意をコントロールできずおねしょをしてしまうというわけです。ある程度の年齢に達しているにもかかわらずおねしょが直らないお子さんのために夜尿症を克服するためには、未発達の脳を活性化させてあげて、尿意をコントロールできるように脳を目覚めさせてあげれば良いのです。(THM!)

以下、排尿のメカニズム。神経システムがどのように排尿をコントロールしているかをご説明いたします。専門的ですがもっと詳しく知りたい方、なぜ脳への刺激・活性化がおねしょを克服するのかを知りたい方はお読みになってください。

膀胱のコントロールは実は結構複雑です。排尿するときは、排尿筋という膀胱の筋層が収縮して膀胱をからにします。

交感神経は尿を膀胱に貯めるために働きます。(排尿を抑制):排尿筋につながっている交感神経は、排尿筋の状態を求心性神経が脊髄のT9-L2のIML(脊髄中間外側核)を通って伝えます。この情報をもとに脊髄T11-12のIMLが遠心性神経で指令を送り膀胱括約筋を締め、排尿筋の収縮を抑制します。

副交感神経はおしっこをするために働きます。(排尿を促進):膀胱に尿が溜まり、膀胱壁が伸びるとその情報を求心性副交感神経が脊髄S2-4を通って伝えます。この情報をもとにS2-4の脊髄レベルから下腹神経を通り、遠心性神経が排尿筋の収縮と膀胱括約筋を緩めるように指令を送ります。

このようにして、尿を貯めるために働く神経と尿を排出しようとする神経が互いに作用しあい、尿を貯めながら尿意(排尿反射)として、その程度・頻度を変えながら脳に伝えているのです。

交感神経・副交感神経は我々の意識でコントロールされない自律神経ですが、我々の意識下にある神経(Somatic) 体性神経も排尿をコントロールしています。脊髄のS2-4レベル前角にあるオナフ核から陰部神経が意識的に尿道尿道括約筋を収縮させます。排尿を我慢するときなどに使いますね。

尿意のコントロール、交感神経・副交感神経を促進・抑制するのが上位の神経システムである脳にあります。脳幹には、Pontine Storage Center(PSC)とPontine Micturition Center(PMC)があります。PSCはStorageつまり尿を貯めるための脳幹部分で、交感神経を刺激し副交感神経を抑制します。これに対し、PMCはMicturition(排尿反射)を司る脳幹部分で、PSCの抑制とオナフ核を抑制することで、尿の貯蓄メカニズムを抑制し排尿を促します。尿が溜まり膀胱壁が伸びれば伸びるほどPMCが刺激され、排尿のメカニズムが促進されるのです。

排尿の促進・抑制をコントロールしている自律神経と、その自律神経をコントロールする脳幹PSC,PMCについてお話してきました。それでは、さらに上位の神経システムがどのようにPSC, PMCをコントロールしているのか。初めのほうに述べさせていただきました、前頭葉が発達していれば尿意を寝ていても尿意は抑制できるという部分についてさらに詳しくご説明いたします。

脳にある視床下部という部分は自律神経系の内臓運動性機能に深く関与しています。視床下部の前野と後野が排尿メカニズムに関連しています。前野はPMCを刺激し、その働きを促進させます。つまり、排尿を促すのです。後野は交感神経を刺激し、排尿を抑制します。

このように複雑な神経システムは排尿をコントロールしていますが、一番上位にある神経システムは脳の前頭葉(特に右)であり、そこからの刺激が視床下部、前野を抑制し、排尿を抑制しているのです。

まとめてみましょう。副交感神経、脳幹のPMC、視床下部前野は排尿の促進。交感神経と脳幹のPSC、視床下部後野は排尿の抑制。これらは自動的に作用しあって、尿は膀胱に溜まり、自動的に尿意を感じさせます。この尿意に対して、脳の前頭葉が視床下部前野を抑制することで(寝ているときでも)、全体的に排尿促進メカニズムが抑制され、排尿を我慢することができるのです。

おねしょの問題は、このように複雑な神経システムが絡んでいます。これらすべての神経システムのなかねおねしょの原因となっている部分はどこか、どこの神経細胞の活性化が必要なのかを、機能神経学的検査を用いて調べて、必要な部分にターゲットを絞って活性化させることが、神経カイロの治療のアプローチです。(THM!)

注:ご紹介しましたのは夜尿症の原因のひとつと考えられる神経システムの要因であり、すべての夜尿症の原因ではないことをご理解ください。

参考
1.Beck. RW., 2008. Functional Neurology for Practitoners of Manual Therapy.
2.Beckwith,C. Module 806 Autonomic Nervous system Chicago seminar, November 2011

Posted on 07/11/2012, in 夜尿症, 子供の疾患. Bookmark the permalink. Leave a comment.

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