2013.04- 慢性的な痛みを脳の異常として考察

今回は2013年4月のMedpage Today(1)の慢性的な痛みが引き起す可能性のある脳内の変化について考察した記事を紹介します。神経細胞が常に、刺激に応じて変化する性質、神経可塑性を持っている事は様々な研究により明らかになっていることです。この神経可塑性は機能神経学の根本となっていますが、神経可塑性は良い方向にも悪い方向に変化する可能性があります。

画像診断技術や神経生理学の発達により、痛みを経験するということは脳の構造的変化と供に体性感覚的、感情的、認識的、遺伝的要因によって影響を受ける多面的な過程であることがわかってきました。慢性的な痛みは中枢神経の変化を引き起こし、感覚や感情、痛みを抑制する調節性の神経回路を変えてしまう可能性があります。急性の痛みと慢性の痛みでは脳への影響においてはっきりとした違いがあります。慢性の痛みは痛みを処理する感情、認識の脳の様々な部位において構造的な変化を引き起します。これらの変化は、恐怖感、不安感、うつ感など感情的変化、認識的変化を引き起す危険性を高めるようです。

神経生理学の研究は個々の経験、考え、行動によっても変化する中枢神経の可塑性という能力を明らかにしています。中枢神経の再構築に影響する神経可塑性の要因には、薬を服用しているか、個々の健康状態、精神状態なども含むようです。身体を動かす事の少ない生活、社会的刺激が少ないなどということも頻繁に痛みと関連していると同時に、神経の可塑性に影響しうる要因です。慢性の痛みに対し脳は機能的、構造的、化学的に変化する可能性があります。痛みに対して脳の特定の部分、痛みのマトリックス(Pain matrix)が反応します。Pain matrixには第一次、第二次体性感覚皮質(S1,S2 Somatosensory Cortices)、島皮質(Insula)、前帯状皮質(ACC)、へんとう体(amygdala)、前頭葉前部皮質(Prefrontal cortex)、視床(thalamus)、大脳基底核(basal ganglia)、小脳を含みます。

神経画像診断技術の発達は、痛みが与える脳への機能的、解剖的、化学的変化を捉えることを可能にしました。例えば、voxel-based morphometry(VBM)は、脳の様々部分の灰白質の濃度を測定します。慢性の痛み関連する脳内のACC, thalamus, dorsolateral prefrontal cortex, cingulate cortex, insular cortexにおいて、慢性の痛み(繊維筋痛症、偏頭痛、骨関節炎など)を持つ患者において、灰白質の濃度が低下することが報告されています。

灰白質の変化と、痛みの程度と期間の相互関係も報告されています。痛みの期間が長いほど、灰白質の減少の大きさと関連しているようです。一方で、慢性的な痛みを効果的に治療することでACC, dorsolateral prefrontal cortex, amygdala, brain stemにおける灰白質濃度が増加することもわかってきています。Diffusion tensor imaging (DTI)を使用し、複合性局所性疼痛症候群の患者の白質の解剖的変化が確認されています。

機能的MRIを使用し、慢性的痛みを持つ方が痛みから気を逸らそうとしたときのPain matrixにおける痛みに関連する神経活動が低下することが報告されています。逆に、痛みを意識を向けたときには、Pain matrixの痛みに関する機能が活性化され、結果としより程度の大きい痛みとして知覚されてしまうと考えられています。このように脳の解剖的、機能的変化だけではなくmagnetic resonance spectroscopy (MRS)の測定では、慢性の痛みに対し、神経伝達物質の変化も報告されています。

このように脳の変化を画像として捉える技術の発達は、慢性的な痛みが及ぼす脳への影響を明らかにし始め、その診断や治療に役立っていくことでしょう。

脳の変化は、学習や発達にも関係し、我々が生きて行く上で必須の機能ですが、痛みに対し悪い方向にも変化していくこと、痛みは我慢するものではなく効果的に治療して行く事が、脳を健康に保つためにも大切と言えるでしょう。

 

References

1. Chrvala,C, Understanding chronic pain as a brain disease, 2013, Medpage today, retrieved from (http://www.medpagetoday.com/resource-center/pain-management/brain/a/38479?utm_content&utm_medium=email&utm_campaign=DailyHeadlines&utm_source=WC&xid=NL_DHE_2013-06-29&eun=g705162d0r&userid=705162&email=drreuvenrosenberg%40gmail.com&mu_id=5867361)

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Posted on 07/09/2013, in 2013.04- 慢性的な痛みを脳の異常として考察, 研究/文献. Bookmark the permalink. Leave a comment.

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