Category Archives: 機能神経学

外傷性脳損傷(TBI)から脳機能回復のために(IAFNR報告4)

この記事はIAFNR 3rd Annual Conference(10/25/2012-10/28/2012)にてDr. Castellanosによってプレゼンされた「Functional network reorganization after traumatic brain injury」をもとに書かせていただきました。

Megnetoencephalography(脳磁図)とはは脳の電気的活動によって生じる磁場を測定しイメージングする技術です。このプレゼンテーションでは、脳磁図を用いて、外傷性脳損傷(以下TBI, [Traumatic Brain Injury])によって生じる脳への影響を測定し、認知療法を行う事でさらに脳磁図がどのように変化するかの実験が紹介されました。

神経可塑性は、このサイトでも詳しく紹介させていただいていますが、これは脳への損傷後も脳機能回復のために大きな役割を担います。神経可塑性の機序はまだ明確にわかっていませんが、この研究では脳磁図を利用して、脳の変化を測定しました。

脳が損傷されたとき、脳のエントロピー(無秩序の度合い)とcomplexity(複雑度)が高くなります。エントロピーと複雑度の上昇は、脳内でのコミュニケーションの低下を意味し、注意力、記憶力、実行力などの変化をもたらす可能性があります。

実験結果としては、TBIを持った人は事故後、健康な人に比べてエントロピーと複雑度が高くなっている事がわかりました。さらに、認知療法を行った後で、それらは減少し、健康な人と同様なレベルまで下がりました。(エントロピーの変化は特にfrontal-temporal areaにて、複雑度の変化は特に前頭葉と後頭葉部分にて起こっていました。)

この研究ではこれまでの研究が示している通り、TBIによって脳の機能構造が変化することが確かめられたと同時に、脳のエントロピーと複雑度のneurophysiologic signalsの変化を測定でき、それらの変化は観察できる行動パターンの変化とも関連があることがわかったのです。つまり、認証障害などの原因として、TBIなどで起こる脳のネットワークの機能的障害、エントロピーと複雑度の上昇などが一因として考えられるようです。

この結果から、TBIによって健康な脳に見られるネットワークが機能的に阻害されることがわかりました。さらに、変化してしまった脳はリハビリテーションによって、回復可能だということもわかったのです。

 

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重心/姿勢動揺検査(Posturography)の重要性(IAFNR報告3)

この記事はIAFNR 3rd Annual Conference(10/25/2012-10/28/2012)にてFrederick Carrick, D.C.によってプレゼンされた「The use of computerized dynamic posturography in the Functional Neurology Practice」をもとに書かせていただきました。

2011年から2012年にかけて、アトランタにあるライフ大学の機能神経学センターではプロアイスホッケー選手が数多く訪れています。プロアイスホッケー選手クロスビー選手の治療で、脳しんとうによる様々な障害を抱えるアスリート達が機能神経学を治療オプションとして選ぶようになりました。

その機能神経学センターにて治療を行っているのは、機能神経学のコンセプトを考えだしたCarrick,D.C.,です。この学会にて、Carrickはクロスビー選手を始め、すべての患者様の治療においてバランス機能の検査の重要性をプレゼンしました。患者様を治療するにあたり、Baselineとなる指標が必要です。バランス機能をデータとして記録し、バランス機能の変化を観察することはReceptor-based therapyを行う上でとても重要だと述べていました。ライフ大学のクリニックでは、患者様の治療にあたり、CAPSという装置を用いて、バランス機能を何回も記録するそうです。

それではなぜ、このバランス機能を調べることがそんなにも重要なのでしょうか。

バランスを維持するためには4つの段階があります。1.自身がどこにいるかを知覚する。(頭、四肢が空間のどこにあるのか)2. 摂動(副次的な力の寄与によって乱される現象)の察知。3.察知した摂動に対し、どのような対処が必要かを判断。4.3の実行。

自身がどこにいるのか、頭、身体が空間のどこにあるのかということとバランスを乱す摂動は、前庭、体性感覚(somatosensory)特に固有受容性感覚、それに視覚によって認識されます。バランス機能を保つことは、起立、歩行などに欠かせない機能なので、これらの情報は重複するものもあります。よって、どこかの機能が低下したり異常が発生しているときでも、他からの情報がそれを補い、バランスを保てる事が可能なのです。

人間の身体は補完的にバランス機能を保つことが可能です。しかし、そのような状態のとき、滑りやすい場所や不安定な地面、暗闇や視界の悪いところなど条件の変化によって補完的に機能していたものが機能できなくなり、転んでしまったりして怪我をしてしまうことが多々あります。(これらは、特に高齢者にとって深刻な問題です。)そのため、条件を変えてのバランス機能の検査を行い、バランス維持のために神経機能が正常かどうかを調べる事が重要です。

摂動に対して、どのような反応が必要かを判断するのは主に中枢神経系です。バランス機能の維持は特に小脳が重要な役割を担っています。バランス維持のために必要な反応はもちろん筋肉の仕事ですが、バランス機能の維持には身体中の機能が正常である事が必要です。先に述べさせていただきました感覚器官や神経系だけではなく、心臓血管、呼吸器系、消化器官なども関節的、または直接的にバランス機能に影響するそうです。よって、バランス機能の検査は、身体の病理的問題のチェックと同時に、全身の機能が正常か否かを調べるために重要なのです。

バランス機能の検査は、このように臨床的に重要なテストですが、上記に述べた通り、バランス機能は身体全体の機能に関わっているため、特定の診断基準として使う事は難しいです。特定の診断をするためにバランス機能検査を用いる事はできないのです。バランス検査は明確な診断とはならないことを理解した上で、この検査は臨床上、役立つ情報を与えてくれます。バランス障害を持つ患者のスクリーニングを行う上ではとても重要な検査とのことでした。

学会では、さらに目眩などのバランス障害の発生メカニズムなどが講義され、目の動き(Slow pursuit eye movement [追跡眼球運動], Saccadic eye movement [衝動性眼球運動], optokinetic nystagmus [視線運動性眼振])、それぞれの運動で機能する神経経路と、それを使った機能神経学的なリハビリテーションが紹介されました。ライフ大学のクリニックでは、バランス障害などに対して、身体のどの部分に問題があるかを見つけ、目の運動やGyroStimなどを使用し、機能が低下している、障害のある神経部分を活性化させることで、神経機能の回復を試みているそうです。それらの刺激のあともその都度何回もバランス機能の検査をCAPSで行い、行った刺激が正しいものであったかどうかを頻繁にチェックしていくそうです。

Dr.Carrickは、バランス機能の検査は、機能神経学を用いるクリニックにおいて欠かせないものであり、このテクノロジーを用いた検査は機能的な障害を発券する事に役立ち、様々な方法で神経経路を刺激する治療の指標として大切なことだ、と結論づけていました。

むち打ちによる姿勢外乱(IAFNR報告2)

この記事はIAFNR 3rd Annual ConferenceにてKlotzek, D.C.によってプレゼンされた「Postural Disturbances associated with Whiplash injuries to the cervical spine」と参考文献1に提示された論文をもとに書かせていただきました。

THM!!(一般の方向け)

交通事故によって、首を痛めてしまう方は多くいます。骨折や脱臼までいかずとも、長期間にわたって痛みを抱えてしまう人、首の痛みだけではなくめまい、ぼんやり感、バランス感覚の消失、倦怠感、集中力の低下、首の凝り、視力障害など、むち打ち後に様々な症状で悩む人は少なくありません。事故にあったとき、まず医療機関を受診し、骨折など起きていないか調べる事はとても重要です。しかし筋肉を痛めているだけだとか、何も問題ありませんだとか、鎮痛剤などを処方されるだけのケースがよくあります。むち打ちでは、首の構造が不安定になってしまい首の関節にあるセンサーから脳へ送っている位置情報が乱れてしまうケースがあります。むち打ちなどによる首からの位置情報の乱れは、脳の問題につながる可能性があり、めまいや集中力低下など、様々な問題のを引き起こす可能性があります。

むち打ちなどの事故後は首の構造の変化、さらにそこから起こる脳の機能低下など調べ、首からの位置情報を正しくすること、機能低下を引き起こしてしまった脳のリハビリなどが有効かもしれません。(*5)

もっと詳しく知りたい方、または医療従事者向け

Overview:

交通事故により頸椎を怪我する人々は数多くいます。これらの多くの人々はその後、様々な痛みを訴えます。痛みの他にも、めまい、ぼんやり感、バランス感覚の消失、倦怠感、集中力の低下、首の凝り、視力障害などの症状が現れる事があります。これらむちうちに関連した障害(Whiplash Associated Disorders, WAD)は、事故後も長期間継続する可能性があり、さらなる身体的な障害への発展する危険性も秘めています。医療従事者は、WADの患者さんを治療する際、頸椎の姿勢コントロールにつながる神経学的なメカニズム、むちうちがどのように体細胞構造を損傷させ、姿勢を司る中枢神経、末梢神経に影響を与えるかという点を検査し、把握する必要があります。

Introduction:

WAD,むち打ちのような怪我の後によく見られる症状の例として以下のようなものがあります。

  • めまい
  • バランス感覚の消失
  • 不安定感
  • 視力障害
  • 痛み

痛みやこれらの症状の回復には数週間から数ヶ月かかるとされていますが、約12-40%の人は引き続き何らかの症状を長期的に抱えてしまうことが報告されています。(2)

姿勢の維持には、視覚、前庭、体性感覚入力をうまく調整、統合し、正確に筋肉をコントロールする必要があります。むち打ちのように頸椎へのダメージを与えてしまうと、筋紡錘や関節の機械的受容器からの正常な固有感覚(Proprioceptive input)(*1)に異常な変化を起こし、結果として、慢性的なめまいや不安定感(首の痛みが無くなったあとも)とつながってしまう可能性があります。頸椎に対して、構造的な変化をもたらす衝撃や怪我は潜在的に、Cervico-vestibular mismatchを起こし、酔ったときに起きるような感覚、通常な感覚に障害をもたらす可能性があります。

Articular Neurology

首、頸椎からの求心性神経(首から脳への情報を伝える神経)にはとても多くの目的地があります。(前庭神経核、小脳、視床、上丘、大脳皮質など)頸椎の固有受容性(proprioceptive)の情報は、主にC1-C3から、前庭器からの情報とともに、前庭神経核に届きます。頸椎から上丘(superior colliculus)と前庭神経核(vestibular nuclei)への求心性神経は、首が動いているときの焦点を定めるためにとても重要な役割を果たしています。また、Cervicocollic reflex (*2)とCervico-ocular reflex (*3)は、頸椎からの求心性神経によって起きる反射機能です。さらに、頸椎の固有受容性の情報は姿勢のコントロールとともに、空間的定位を調節するのに重要な役割を果たしています。(3)

Effects of Nociception

侵害受容繊維(nociceptive fibers)(*4)が刺激されるとき、固有受容性の情報が正常に伝わらず、歪められてしまう可能性があります。(5)動物実験の結果では、首の筋肉、関節に存在する侵害受容器が刺激されるとき、頸椎からの固有受容性の求心性情報に大きな変化が生じることを報告しています。(6-7)この痛みが存在するときに固有受容性情報が乱されてしまうという理論は、他にも筋肉の痛みが親指の位置情報を乱す(8)、足首に痛みの刺激を送ったとき足首からの固有受容性情報が減少(9)などの研究結果がその可能性の高さを示しています。痛みによって固有受容性情報に変化が生じる原因としては、侵害受容器が刺激されるとき筋紡錘(muscle spindle)の刺激感応性の低下が起きる、または運動/感覚神経システム間のニューロン間(spinal interneuronal integration between the motor and sensory sytems)の閾値に変化が生じることが提唱されています。(8-9)固有性情報の変化、運動出力の変化は脳の感覚運動皮質(sensorimotor cortex)に神経可塑性的な変化をもたらすことが報告されています。(10-12)

痛覚(nociception)と痛み(pain)は異なります。痛覚は外傷などの侵害刺激によって侵害受容器が刺激され、細胞膜のNa+透過性が上昇、脱分極が起こり起動電位が閾値を超えたとき、インパルス(活動電位)が発生するという一連の神経伝達の現象のことを言います。痛覚は結果として主観的な痛みとして知覚されることが多々あります。痛みは「実際または潜在的に組織を損害させることで発生する嫌な/不愉快な感覚、感情的な経験」のことを言います。

この2つの違いは実は重要で、特に今回のむち打ち症状のお話において、なぜ主観的な痛みがないのに、頸椎からの固有受容性情報に変化が生じてしまうのかというのを説明するときに大切な違いです。WADに見られる筋肉の異常は主観的な痛みが存在していなくても引き起こされる場合があり、またそれは通常の軟部組織が治癒する時間よりも長期間にわたって続く可能性があります。(13)

中枢神経系に起こる変化

近年の研究などでは、中枢神経系が求心性の固有受容性情報を活用して筋骨格系の2つの基準系(1.自己中心的定位(egocentric)2.外部を中心とした(allocentric))を築くということが報告されています。(14)例えば、ひじがどこにあるのかということは、頭と首の位置情報によって決まり、WADを抱える患者さんではその情報が乱されてしまうようです。(15)また、頭の姿勢と肩の位置の関係を能動的、受動的動作中に調べたところ、首に痛みのある人と全くない人の間では大きな違いが出てしまうことも報告されています。(16)つまり外傷や病気などから身体からの固有受容性情報に乱れが生じたとき、中枢神経系にも変化が起こり、外部刺激を捉え方、情報のプロセスにも変化が起こるため、姿勢コントロールにも障害が起きてしまう可能性があるということです。(16)

首からの固有受容性情報の変化だけではなく、腰痛を持っている高齢者の方でも同様に、腰からの固有受容性情報に変化が起こり、直立姿勢に影響を与えていることが報告されています。(15)

結果としてこれらの研究報告から言える事は、WADでは頸椎の関節位置情報にエラーが生じ、頭を正常な位置に保持できなくなってしまいます。これは、WADの患者さんの中でも特に、目眩など症状を抱えている人に、頸椎の関節情報の乱れは大きいようです。また、WADの患者さんでは異なる姿勢に変えて行うような仕事などに問題が起きることも報告されており、WADによる固有受容性情報の乱れが引き起こす、中枢神経系の変化が姿勢コントロールを大きく乱し、様々な行動に支障をきたす恐れがあることがわかってきています。

治療*5

首への外傷などにより侵害受容器が刺激されたことで二次的に起こる、固有受容性情報の変化が、WADの目眩、姿勢の乱れ、バランス感覚の消失などに大きく関わっていることがわかってきています。目眩がなくなるとき、首の痛みも無くなるという、2つの一時的な関連性が報告されていることから(17)、頸椎の侵害受容器の刺激を減らし、固有受容性情報を正常化させることが治療として大切です。また中枢神経系の変化が姿勢コントロールに影響を与え、目眩、バランス感覚などにも影響している事から、中枢神経系に変化を与えるような治療も合理的と言えるでしょう。

現在のところ脊椎矯正(Spinal manipulation)はWADの治療して一般的なもの、広く使用されている治療方法ではありません。しかし脊椎矯正については近年、様々な中枢神経系、関節の生理学的効果が報告されています。(18-22)Carrickは脊椎矯正の前後の盲点の大きさを調べ、固有受容性情報の変化と中枢神経系の変化の関連を提唱しました。(18)脊椎矯正による変化として他にも、求心性情報の変化、痛覚過敏の現象など(“alternations in Group Ia/II afferent input, diminished pain sensitivity, diminished central facilitation and alterations in somatosomatic reflexes”)(19)が報告されています。さらに、脊椎矯正による中枢神経系の内因性、末しょう神経系の鎮痛効果を引き起こし痛みの抑制効果も報告されています。(20)臨床実験では、脊椎矯正によって頸椎の可動域が改善され、痛みの現象につながったものがあります。(21)また、中枢神経系に変化を与えるリハビリとして、Gaze stabilitation exerciseや円滑追跡眼球運動(smooth pursuit eye movement)、衝動性眼球運動、などを利用し乱れた頸椎の構造、前庭神経核によって引き起こされた感覚−運動の不釣り合いを改善させることも有効な治療法かもしれません。(23)

結論

頸椎への外傷は、固有受容性情報の変化を引き起こし、身体の位置感覚を司る中枢神経系にも影響を与えます。この直接の結果として、バランス感覚が乱れてしまうことが多々あります。乱れてしまった頸椎からの固有受容性情報を正常にするため、脊椎矯正がひとつの治療オプションとしてあります。しかし、頸椎とWADの症状の関係について、医療従事者はもっとよく知る必要があると同時に、WADの治療方法として脊椎矯正が有効かについてもっと研究をしていく必要があります。

*1:固有受容性とは筋・腱・迷路などに存在する自己刺激を感じ、知覚神経末端装置によって統御されている知覚。関節の位置関係、関節の動き、位置変化情報などを脳に送る。

*2: The cervicocollic reflex is a cervical reflex that stabilizes the head on the body. Afferent sensory changes caused by changes in neck position, create opposition to that stretch by reflexive contractions of neck muscles. (Ito et al, 1997).

*3: The cervico-ocular reflex consists of eye movements driven by neck proprioceptors.

*4: 外傷などによる侵害刺激を、インパルスとして脳に伝える神経細胞。これが脳に痛みとして知覚される。

*5:むち打ち後に、日本の大多数の”カイロプラクティック”をお勧めするものではありません。脊椎矯正から有益な結果を得られる可能性はありますが、まずは資格ある医療従事者に受診していただく必要があります。またトップページ免責事項をご理解の上、本記事を受け止めていただきますようお願いいたします。

参考文献

  1. Klotzek, A., Carrick FR., Postural Disturbances Associated with Whiplash Injuries to the Cervical Spine., Func Neurol Rehabil Ergon 2012; 2(3):pp.243-250
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  5. Mosely GL. Re-conceptualizing pain accoding to Modern Pain Science. Phys. Ther Rev. 2007; 12:169-178
  6. Pederoson, J, et al., Increased concentration of bradykinin in neck muscles increases the static fusimotor drive to muscle spindles in teh neck muscles in cats. Pain. 1997; 70:83-91.
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  12. Liepert J, et al., Changes of cortical motor area size during immobilization. Electroenceph. Clin. Neurophys. 1995; 97:382-6.
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  15. Tjell C, Rosenhall U. Smooth pursuit neck torsion test a specific test for WAD. J. whiplash and related disorders. 2002;1(2):9-24
  16. Paulus I, Brumagne S. Altered interpretation of neck proprioceptive signals in persons with sub clinical recurrent neck pain.  J. Rehabil Med. 2008;40:426-432
  17. Treleaven,J et al., Dizziness and unsteadiness following wihplash injure: Characteristic feature and relationship with cervical joint position error. J Rehabil Med. 2003;35(1)36-43
  18. Carrick FR. Changes in brain function after manipulation of the cervical spine. JMPT. 1998;21(4):304.
  19. Pickar J. Neurophysiological effects of spinal manipulation. The Spine Journal. 2002;2:357-71
  20. Schacklock M. Central pain mechanisms: A new horizon in manual therapy. Australian Journal Physiotherapy. 1999;45:83-92
  21. Martienez-Segura R, et al., Immediate effects on neck pain and active range of motion after a single cervical high velocity low-amplitude manipulation in subjects presenting with mechanical neck pain: A randomized controlled trial. JMPT. 2006;29(7)511-17
  22. Carrick FR. Cervical radiculopathy: the diagnosis and treatment of pathomechanics in the cervical spine. JMPT. 1983;6(3)129-37

互いに作用する胃腸と脳のつながり(IAFNR報告1)

この記事はIAFNR 3rd Annual ConferenceにてDr.Vojdaniによってプレゼンされた「免疫性炎症によって引き起こされる代謝性疾患」と参考文献1に提示された論文をもとに書かせていただきました。

THM!!(一般の方向け)

胃腸と脳は、我々が思っているよりも密接にコミュニケーションをとっています。我々は呼吸することや、皮膚や髪の成長を考える必要はありません。我々は、何を食べるか決めてから、口の中に入れた後、何を口に入れたか、覚えている必要も考える必要もありません。ほとんどの人は、何を食べたかすぐに忘れてしまう事でしょう。しかし、何を食べたか、少しは覚えていた方が良いかもしれません。腸筋神経叢は、腸壁内の自律神経で、その構造的、機能的、類似点から第二の脳と呼ばれています。近年の研究で、胃腸−脳の双方向性の関係が明らかになってきました。一方がもう一方に与える影響は大きく、腸筋神経を含んだ自律神経、ホルモン経路など様々な経路で互いに作用し合っています。狂牛病は、食べたものが神経システムに及ぼす病気の例として、とてもわかりやすく話題になった病気ですが、狂牛病に限らず、我々の食べているものは様々なレベルで胃腸内のバクテリア環境やその防壁構造に影響を与え、便秘や下痢、消化不良などといった症状だけではなく、食べ物によって引き起こされる胃腸内の異常が神経変性疾患を含めた様々な神経の障害、異常の要因となる可能性があります。食べ物アレルギーやセリアック病、慢性的な胃腸炎などを抱えている方々は多いと思います。食生活の改善は、それら胃腸の異常だけではなく、そこから直接的または間接的に引き起こされる可能性のある神経疾患の改善と予防にもつながるかもしれません。これを機に、食生活の重要さをもう一度見直してみると良いかもしれません。我々の身体、脳は我々の食べるものによって作られるというのは大袈裟な表現ではないかもしれません。

(食生活の改善をテーマに、グルテン過敏症についてはこちら

以下、もっと詳しく知りたい方、医療従事者の方々向けです。

Overview

胃腸と脳、何らかの関係はあると考えられてきましたが、最近ようやくどのような関係があるのかがわかってきました。2つとも外部からの侵入者に対する防御、免疫システムと大きく関わっています。胃腸管にはその表面に、外部からの侵入を防ぐバリアーの構造があり、脳にも血液脳関門(血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する構造)があり、それぞれ、外部からの侵入者を防ぐという点において、似た構造をしています。この2つの関係は、ただ単に似た役割と構造というだけではなく、2つは互いにコミュニケーションをとりあい、影響し合っていると考えられています。その関係は生まれたときから始まっており、脳がどのように形成されていくかという点にも大きな影響を与えると考えられています。いくつかの研究は、胃腸の疾患と自己免疫疾患、脳に関係する疾患(糖尿病[Typle 1], 鬱病、多発性硬化症、自閉症など)の関連性を示しています。神経変性の疾患は、神経システム内の異常が原因ではなく、慢性的炎症、胃腸内に存在する微生物環境の異常やその他胃腸の異常が胃腸のバリアー構造の異常を招き、脳の血液脳関門の機能にも異常を招く可能性があるとされています。この理論は、胃腸と脳のバリアー構造の修復により、様々な内臓器官の機能の修復、病気の予防の可能性を示唆しています。

脳の胃腸の双方向性コミュニケーション

近年の様々な研究が、脳と胃腸の関係を示しています。2009年、ReicheltとKnivsbergは、胃腸と自閉症の子供の脳の関係を調べました。4年間の研究の結果、グルテンとカゼインなしの食事が自閉症の子供に大きな改善をもたらすことを見つけ出しました。食事が及ぼす脳への影響の可能性を示しました。(2)また12年におよぶ大規模な研究は、中枢神経と胃腸は互いに影響し合っていることを結論づけています。(3)最近のBercikのレビューでは、腸筋神経システム、迷走神経、交感神経、脊椎神経、ホルモン経路(サイトカイン、ホルモン、神経ペプタイドなど)などが伝達物質として、脳ー胃腸のコミュニケーションを担っていると報告しました。(4)さらに、O’Mahoneyは、胃腸の微生物環境が脳とコミュニケーションする、よって行動を調節する能力は、近年わかってきている新たな健康と病気の概念であるとしています。胃腸のバクテリアの減少、増減は胃腸、神経ホルモン、免疫システムの関係性を崩し病気に導く可能性を秘めています。(5)

脳が胃腸を含めた、内蔵とコミュニケーションをとる経路には、自律神経(Hypothalamic-pituitary-adrenal, HPAとsympatho-adrenal axis)があります。この2つの自律神経経路は、胃腸と関係のあるリンパ組織(the gut-associated lymphoid tissue, aka., GALT)を調節する役割があります。一方で、胃腸は脳とコミュニケーションをとるために、主に求心性神経、免疫細胞、腸内分泌細胞を利用しています。これら双方向性の関係は、胃腸または脳の一方に問題が生じたい際、もう一方にも何らかの障害を及ぼす可能性を示唆します。つまり胃腸の問題から、直接的または間接的に、自己免疫疾患や神経疾患につながる可能性があるのです。

神経変性疾患と胃腸のつながり

胃腸内のバクテリア環境や、その他胃腸の問題が、神経変性疾患の要因となる可能性が近年示唆されています。BererとKrishnamoorthyは多発性硬化症の動物モデルより、胃腸のバクテリア環境が中枢神経の自己免疫を誘発する可能性を提言しています。胃腸のバクテリア環境は局所的な免疫機能の調節だけではなく、全身の免疫機能に影響を与える事がわかってきました。(6)

RoundとMazmanianは、胃腸内の微生物環境が胃腸の免疫反応を形成すると結論づけています。彼らは、免疫不調が様々な、自己免疫疾患、アレルギー、癌などの要因となりえることを訴えています。彼らの研究では、胃腸内のバクテリア環境の異常が、免疫細胞の異常を招く証拠を提示しました。(胃腸内バクテリア環境の異常が免疫制御の異常を招く。これは、炎症性サイトカインの生成につながり、LPS[*1]の中枢神経への侵入につながります。結果として、様々な神経物質に対する抗体生成につながり、神経炎症、神経変性、神経自己免疫性などを招きます。)(7)

とっても似ている胃腸と脳の免疫システム

これまで、胃腸と脳のコミュニケーションと、それぞれ外部の侵入者に対する防御システムがあることを述べてきました。2つの防壁バリアーは、同じ目的を持っています。この共通の目的は、2つの構造の類似点だけではなく、そのメカニズムや生化学にも共通点があります。Scienceの2011年11月号(8)では、Stellaが、脳と胃腸の2つのシステムが、どのようにarachidonic acidを生成し、proinflammatory prostagladinsへ変換し、炎症を招くかということを示しました。2つのシステムともに、とても類似したプロセスだったのです。

さらに学会では、このプロセスについての説明、さらに胃腸と脳の構造的なバリアーの話が詳しくなされました。キーとなるポイントを抜粋させていただくと”While the intestinal barrier’s epithelial cells are endodermal in origin, wheres the BBB’s endothelial cells are mesodermal, both are held together by tight junctions that polarize the cells to form distinct apical and basolateral membrane compartments. “(1)胃腸も脳も、その構造的に内部と外部の輸送はきつくコントロールされていますが、病気などのとき、この経細胞輸送経路に異常が発生してしまいます。

防壁をくぐり抜けて、胃腸から脳へ

胃腸のepithelial barrierとそのintercellular tight junctionsがリンパ組織、神経分泌ネットワークを通じ、感染症や病原菌の第一防御壁として機能します。経細胞輸送に異常が生じたとき、胃腸内または外の自己免疫異常が発生する可能性があります。このような防御システムの崩壊、異常は食物アレルギー、自己免疫疾患の誘発を招く可能性があります。(9)胃腸、自己免疫異常は、内毒素(LPSなど)と他の胃腸内の好気性、嫌気性バクテリアからの毒素の増加を伴う事がわかってきています。このような毒素の増加は、慢性的な胃腸内の炎症、構造的バリアである、Tight junctionプロテインの変性などを招きます。感染症や胃腸内の異常には、このように、LPSなどの毒素の異常が関係している事がわかってきています。胃腸内防御の崩壊と自己免疫疾患の関連において、LPSは氷山の一角にすぎないですが、Liなどは以下のようにLSPの役割を話しています。「intratracheal installation of LPS in the rat produceces a neutrophil alveolitis, transiently increases airspace epithelial permeability, and increases the TNF activity and NO levels in bronchoalvelolar lavage fluid and in supernatant of BAL leukocuytes in culture」(10)

密着結合プロテインの崩壊

Zonulinは胃腸の透過性を調節するひとつの密着結合プロテインです。糖尿病の兆しがある患者の血清を検査したところ、0.9-3.5年内に糖尿病を発病した70%の患者の血清にzonulinが増加していたことがわかりました。これらの結果は、胃腸の透過性の増加はzonulin upregulationが関連し、病気の発病、胃腸の透過性、自己免疫疾患などにも関連しています。zonulinの増加は、セリアック病患者にも見られることがわかりました。(10)zonulinの崩壊は、胃腸の透過性を増加させ、様々な疾患につながる可能性が示唆されています。

なお、日本でも大きく報道された狂牛病、(BSE, bovine spongiform encephalopathy)のメカニズムについて、胃腸と脳の関係を示すひとつの証拠として、説明がありました。(ここではその説明は省かせていただきます。)

Discussion

セリアック病患者の約50%は、グルテンフリーの食事(約6ヶ月)で、腸絨毛の状態が改善し、様々な症状も改善されると報告されています。Leaky gut syndromeがセリアック病から誘発されるメカニズムといて、Gliadinが上皮細胞と結合し、密着結合プロテインを損傷させることが提唱されています。このようなケースで、グルテンフリーの食事は、LPS転移と胃腸の透過性増加による炎症反応の改善になりません。しかし、グルテンフリーの食事と、他の腸絨毛改善のための自然療法とを組み合わせ、30-90日間の治療では、症状の改善が認められたそうです。

結論については、文頭のTHMをご参照ください。

*1:LPS(lipopolysaccharide), the inflammogen.

参考文献

  1. Vojdani, A, Bautista, J., Intestinal and Blood-Brain Barrier: Interface between Health and Diseases, 2012, Funct Neurol Rehabil Ergon 2012; 2(3):pp.277-297
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第3回IAFNR学会参加報告

10月25日から10月28まで、第3回目となるInternaional Association of Functional Neurology and Rehabilitation (IAFNR)の学会へ参加させていただきました。IAFNR(http://www.frcarrickresearchinstitute.org) は、Dr.Carrickが発案した機能神経学のという新たな治療コンセプト(身体の様々な受容器(レセプター)を刺激し、神経可塑性を利用して神経システムとその機能を変化させる)の研究を進めている団体です。機能神経学を用いた治療方法は、とても新しいものですが、その臨床結果(メディアで話題になったものには「プロアイスホッケー選手シドニークロスビーの復活」や「ABC ニュースでの特集」などがあります)から急速に広がりを見せている治療方法です。

今回の学会では様々な研究報告がされたり、これから機能神経学を広げていくための議論が交わされました。最新の研究報告については、それぞれのテーマに分けて、追って報告させていただきたいと思います。まずは、この学会に参加させていただいた感想から述べさせていただきます。

私の今いるクリニック、ヒューストン神経カイロプラクティックも通常のカイロプラクティックのコンセプトに加え、機能神経学をもとに治療プランを立てさせていただいております。カイロプラクティック矯正による関節の正常化のみならず、メトロノームやドライヤーの温風、目の運動など最初は少し驚かれるような神経の刺激方法や、一見「こんなことで?」っと思ってしまわれがちなセラピーの内容も含みますが、セラピーの前後では神経機能の違いが顕著に現れることが多いです。

今回の学会では、我々の行っていることの原点に触れられた気がしました。もとになっているコンセプトの論文などは読む事ができても、実際に発案したDr.Carrick に出会えるということや、そのお話を聞けるということ、加えて機能神経学を行っている世界中の医療従事者と交流できるということは、論文を読むだけでは得られない貴重な経験でした。今回の学会での一番の収穫は、研究結果の発表よりも、機能神経学、神経カイロプラクティックを実践している人々とその想いを共有できたこと、彼らの情熱を感じられたことだと感じております。機能神経学と普及と発展のため、また一人でも多くの患者様により良いケアを提供して行くためには、他の医療従事者との協力関係を築いていくことと同時に、より多くの研究が必要だと大きく感じました。

私にとってとても衝撃的な3日間となりました。それぞれの患者様にベストケアを提供できることを追求し、これからも機能神経学の道に進み続けたいと強く思った学会になりました。

最後にDr. Carrickがこのようにお話しておりました。「我々のしていることは素晴らしいことです。しかし、それを世の中に発信していかなければいけません。みんなに伝えなければ、グルテンフリー(*1)の美味しいピザを、クローゼットの中で隠れて食べているようなのものです。」私も、一医療従事者として、機能神経学という治療オプションが存在することを発信し続け、まずはヒューストンの地域コミュニティに貢献していきたいと考えております。

*1:グルテンフリーという言葉は日本ではまだあまり馴染みがないかもしれません。今回の研究報告の中でも消化機能と脳の関係の報告がありましたので、最初のレポートはグルテンフリーについて書かせていただきたいと思いますので少々お待ちください。

Special Thanks: このたび学会参加にあたり、私のスポンサーになっていただきました大場弘先生(D.C., DACNB)に感謝の意を捧げたいと思います。このような素晴らしい学会へ参加させていただきまして、誠にありがとうございました。大場先生は日本で機能神経学を実践する数少ない機能神経学の認定ドクターです。大場先生のHPはこちらから(manual-medicine-jp.org