Category Archives: 脳・神経の病気

トゥレット症候群

トゥレット症候群についてのお話です。(注:トゥレット症候群の治療法を紹介する記事ではありません。トゥレット症候群について、またその神経学的考察と参照文献1の臨床報告を引用してご紹介しています。ヒューストン神経カイロプラクティッククリニックでの臨床も行われていますが、今回引用、報告する内容は当クリニックでの臨床報告ではありません。)

まずトゥレット症候群とは不随意の運動性、音声チックが長期間に渡って続くチック障害です。チック障害とは突発性で不規則しかも不随意(無意識に)、無目的で急速な運動や発生が起きることです。運動性チックには、顔面の素早い動きや首を振る、腕や肩を回す、身体をねじったりする、自身の身体を叩く、他人や周囲のものを触るなどがありその種類や現れ方は多岐にわたります。音声チックには、咳払い、うなり声、ため息、叫び声、罵りの言葉、思った事、考えた事を何度も繰り返してしまうなどがあり、これも現れ方は多種多様です。これらのチックは、前途したように無目的で不随意のものなので、多くの場合自身でコントロールの効かない現象です。またトゥレット症候群を持つ患者さんが同時に、強迫性障害やADHD、うつ病などの精神的疾患を抱えるケースがよく見られます。

チックはどのようものなのか、下記の動画をご覧下さい。

原因は神経学的な要因と遺伝的要因が示唆されていますが、ここでは機能神経学的な考察をさせていただきます。

トゥレット症候群を抱えている人々では前頭葉と大脳基底核とをつなぐfrontostriatal systemの障害がチックを抑えるための制御機能を損なっている可能性があります。画像検査においては、大脳皮質、脳梁や大脳基底核の大きさなどの違いが報告されています。(2-7)また小脳の萎縮も関連が示唆されています。(8) さらに、大脳、大脳基底核の解剖学的、機能的な左右差も報告されています。(9-10)トゥレット症候群は子供の頃に発病し、成長するにつれて自然治癒する場合もありますが、大人になってからもトゥレット症候群が治らないケースも少なくありません。大人になってからも、frontostriatal systemの障害が残ったままだったり、正常な神経ネットワークが構築されないことが考えられます。

2004年と2009年の文献にて、チックを抑えるために代替医療のアプローチが報告されています。代替医療は通常医療のアプローチ以外のアプローチ、カイロプラクティックの矯正や栄養学的サポートなどが含まれます。加えて機能神経学的アプローチでは、正常に機能してない神経システムのリハビリを行う、損なわれている神経機能を取り戻す、再構築するためのリハビリを行うことで、トゥレット症候群の改善を試みます。2011年、Dr.Martinezは機能神経学を加えた代替医療のアプローチによって、トゥレット症候群の改善に成功したケースを以下のように報告しています。(1)

患者は27歳女性。トゥレット症候群と診断されたのは23歳時、彼女のチックの症状は瞬きと、首と肩をすくめる動作とのことです。音声チックは、喉を鳴らす、甲高い声をあげるなどがあったようです。さらに睡眠障害と強迫性障害の症状も併発しており、ガムを決まった回数噛まないといけないなどの症状もあったとのことです。Dr.Martinezの検査結果(機能神経テストも含む)では、バランス、歩行、コーディネーション、眼球運動(saccade)などに機能的問題が見つかりました。検査結果からDr.Martinezの治療は約4ヶ月間の治療で、関節の動きを正常化させるカイロプラクティック矯正(Coupled motion)、眼球運動(Saccade)、音セラピーを行いました。(詳細な治療内容は簡略します。)患者は一度の治療でチックの頻度が劇的に減った事を報告し、2週間後にはチックの頻度がさらに減り、生活に置けるストレスが減った事、睡眠がよくとれるようになったことなどが報告されました。同時にバランス、コーディネーションなどの神経機能検査も改善していきました。

これはトゥレット症候群の治療法の提唱ではなく、トゥレット症候群は脳の機能障害が関連している可能性があり、神経機能のリハビリにより状態が改善する可能性を示唆しています。

最後にトゥレット症候群は社会的認知度がまだまだ低い事から、様々な社会的問題があります。この症状知らない人からは”変な人”として見られてしまうかもしれません。下記の動画は、トゥレット症候群と診断されている少年が、その症状から”爆弾”という言葉を空港で何度も発してしまい(不随意の音声チックなのでコントロールができません。)飛行機への搭乗を拒否された事を報道するニュースです。トゥレット症候群への理解が必要なのはもちろんですが、医療従事者としては通常医療と代替医療の連携から神経システムの正常化により、症状改善に努めていく医療システムが必要だと考えます。

参考文献

  1. Topics in Integrative Health Care 2011, Vol. 2(2)   ID: 2.2005 (accessed on 6/4/13 via http://www.tihcij.com/Articles/Chiropractic-Manipulation-Functional-Neurologic-and-Nutritional-Management-for-the-Reduction-for-Tourette-Syndrome-Symptoms-in-a-27-Year-Old-Woman.aspx?id=0000279)
  2. Peterson BS, Thomas P, Kane M J, Scahill L, Zhang H, Bronen R, King R A, Leckman J F, Staib L. Basal Ganglia volumes in patients with Gilles de la Tourette syndrome. Arch Gen Psychiatry 2003;60:415-424.
  3. Kataoka Y, Kalanithi P S, Grantz H, Schwartz M L, Saper C, Leckman J F, Vaccarino F M. Decreased number of parvalbumin and cholinergic interneurons in the striatum of individuals with Tourette syndrome. J Comp Neurol 2010;518:277-291.
  4. Peterson BS, Staib L, Scahill L, Zhang H, Anderson C, Leckman J F, Cohen D J, Gore J C, Albert J, Webster R. Regional brain and ventricular volumes in Tourette syndrome. Arch Gen Psychiatry 2001;58:427-440.
  5. Peterson BS, Skudlarski P, Anderson A W, Zhang H, Gatenby J C, Lacadie C M, Leckman J F, Gore J C. A functional magnetic resonance imaging study of tic suppression in Tourette syndrome. Arch Gen Psychiatry 1998;55:326-333.
  6. Plessen KJ, Lundervold A, Gruner R, Hammar A, Lundervold A, Peterson B S, Hugdahl K. Functional brain asymmetry, attentional modulation, and interhemispheric transfer in boys with Tourette syndrome. Neuropsychologia 2007;45:767-774.
  7. Plessen KJ, Lundervold A, Gruner R, Hammar A, Lundervold A, Peterson B S, Hugdahl K. Functional brain asymmetry, attentional modulation, and interhemispheric transfer in boys with Tourette syndrome. Neuropsychologia 2007;45:767-774.
  8. Cerebellar morphology in Tourette syndrome and obsessive-compulsive disorder. Ann Neurol. 2010;67:479.
  9. Marsh R, Zhu H, Wang Z, Skudlarski P, Peterson B S. A developmental fMRI study of self-regulatory control in Tourette’s syndrome.Am J Psychiatry 2007;164:955-966.
  10. Plessen KJ, Wentzel-Larsen T, Hugdahl K, Feineigle P, Klein J, Staib L H, Leckman J F, Bansal R, Peterson B S. Altered interhemispheric connectivity in individuals with Tourette’s disorder. Am J Psychiatry 2004;161:2028-2037.

パーキンソン病に対してできること

パーキンソン病(Parkinson’s Disease)とは、中年以降の発症が多い、脳内の黒質の神経細胞が減少・機能低下し、結果として神経伝達物質のドーパミンが減少することにより引き起こされる病気です。ドーパミンは快感や意欲に関連する物質として知られていますが、さらに運動動作のため脳内の黒質と脳のほかの部分とのコミュニケーションに必要な神経伝達物質です。ドーパミンは人間のスムーズでよく整った筋肉動作に必要な物質です。約60-80%のドーパミンを生成する神経細胞が変性または損害したとき、パーキンソン病の運動障害の症状が現われます。

Braak’s hypothesisという今日の理論によると、パーキンソン病において最初にみられる兆候は、腸筋神経系、髄質、嗅球(嗅覚繊維をうける)に見られるとされています。つまり、これらが影響を受けたときにみられる、嗅覚の減退・消失や睡眠障害、便秘などがパーキンソン病特有の運動障害よりも数年早く見られるのでないかと考えられています。(1-3).ほかにもパーキンソン病に先行する症状の例としては、表情の変化、歩行時の腕の振りの変化、猫背、片方の足を引きずる、手足や首に麻痺や刺痛、バランス感覚の消失、振るえなどが考えられます。(4). (注:これらの症状をもっている人がパーキンソン病を発病するのではなく、パーキンソン病を発病する人が運動障害より前に見られるとされる兆候の例です。)

これらの兆候があってから運動障害を発達する人も、これらの兆候がないまま運動障害をきたす人もいると思いますが、パーキンソン病における運動障害では手の振るえや筋肉のこわばり・つっぱり、歩行が小股になる、歩行中によく転ぶなどがみられます。

この中脳黒質のドーパミン分泌細胞の変性によって起こるパーキンソン病の原因は特発性とされ、よくわかっていない現状です。近年、少なからず特定遺伝子の突然変異がパーキンソン病の原因となることが発見されていますが、ほとんどの症例が非遺伝性と考えられており、その他、毒素・頭部外傷・低酸素脳症・薬剤による誘発なども原因になりうると考えられています。つまり、その他多くの病気と同様、それぞれの生活習慣や食生活・ストレスレベルなどによっても起こりうる可能性があるのです。

それではパーキンソン病の治療においてのお話です。症状・状態によって異なりますが、通常、薬物療法・外科療法・運動療法などが考えられます。薬物療法では、一般的に脳内のLドーパの分泌を補ってくれる薬剤を処方するのが一般的のようです。これは脳内で分泌できなくなったドーパミンを外から補うということで、根本的な治療とはなりません。これらの通常医療に加え、アメリカにおいてもうひとつのオプションとしてカイロプラクティックや機能神経学からよい効果を得る患者さんも存在します。臨床報告(5-8)ではその有効性を示すものがいくつか報告されていますが、パーキンソン病の治療としてメジャーな選択肢とは言えない状況です。(9).

しかし、現在はメジャーな選択しではないかもしれませんが、機能神経学やカイロプラクティックからよい効果を得られる可能性がある患者さんはたくさんいると考えられます。機能神経学を用いているDr. Lieuranceは、パーキンソン病についてグルタチオンというサプリメントとカイロプラクティック矯正による治療での有効性を報告しています。機能神経学を用いたカイロプラクティックでは、カイロプラクティック矯正により脳を刺激し、脳のアンバランスや機能低下している神経細胞を活性化させます。パーキンソン病の治療には、通常医療の診断力や薬物も必要な場合が多いですが、機能神経学が役立てる部分も少なからず存在します。

参考文献
1.National Parkinson Foundation (http://www.parkinson.org/Parkinson-s-Disease/PD-101/What-is-Parkinson-s-disease.aspx)
2.Satio. Y., Murayama. S.,Braak’s hypothesis and non-motor symptoms of Parkinson disease, Brain Nerve. 2012 Apr; 64(4): 444-52.
3.Brooks DJ., Examining Braak’s hypothesis by imaging Parkinson’s disease., Mov Disord., 2010; 25 Suppl 1:S83-8. 
4. Schmoe, J D.C., What is Parkinson’s disease? (http://schmoechiropractic.blogspot.com/2011/10/what-is-parkinsons-disease.html)
5. Chung J. Reduction in Symptoms Related to Parkinson’s Disease Concomitant with Subluxation Reduction Following Upper Cervical Chiropractic Care, Journal of Upper Cervical Chiropractic Research 2011 (Mar 14);   18–21
6. Elster, E., Eighty-One Patients with Multiple Sclerosis and Parkinson’s Disease Undergoing Upper Cervical Chiropractic Care to Correct Vertebral Subluxation: A Retrospective Analysis., J Vertebral Subluxation Research 2004 (Aug);   23 (8):   1–9
7. Elster, E. Upper Cervical Chiropractic Management of a Patient
with Parkinson’s Disease: A Case Report, J Manipulative Physiol Ther 2000 (Oct);   23 (8):   573–577 
8.  Elster, E. Upper Cervical Chiropractic Management of 10 Parkinson’s Disease Patients, Todays Chiropractic 2000;   29 (4) July
9.O. Suchowersky, G. Gronseth, J. Perlmutter, et al.,  Practice Parameter: Neuroprotective strategies and alternative therapies for Parkinson disease (an evidence-based review).,Neurology 2006;66;976 (article is available at http://www.neurology.org/content/66/7/976.full.html)